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2016年3月1日更新
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創造は無限、世界にひとつのものを。一級貴金属技能士 内田博紹(うちだひろつぐ)さん(平成10年受賞)
内田さんは、国内外のコンテストで130を超える受賞歴を持つ貴金属加工の名工。
宝石やプラチナなどを用い、精巧で華やかなジュエリーを制作している。装着感も良く、丈夫な作りで一生身に着けられる。
金銀細工を営む家に生まれ、「将来、身を立てる道は知力を生かすのか体力か技術か」という高校の先生の言葉に影響を受け、技術を磨く道を選んだ。
尊敬する親方のもとで鋳造、成形、磨き、仕上げなどさまざまな伝統技法の修行を積み、多くの良い作品を見て、自分が理解できない作りのものは、解体して学んだ。ヨーロッパの聖堂や美術品などの美しさからも感性を磨いたという。
独立後、30代で国内、40代で世界的なコンテストに挑戦し、認められたことが大きな喜びとなり、その後も挑戦し続けていく。
全国の展示会などにも積極的に参加し、デザインから制作まで一貫したそのものづくりは、独創性や技術力からユーザーの高い評価を得た。
「創造は無限。既成の物や方法を真似するだけでは、人は評価しない。3Dや金型鋳造ではできないものを目指し、天然の宝石のもつ表情を表に出す作りを続ける」と。ものづくりへの熱い思いは、業界の発展や後継者の育成にも注がれる。
工房には「見て、聞いて、教わって、自分のものにする。工具は自分にあうものとする」の貼り紙。教え子には、持てる知識や技術、仕事への真摯(しんし)な姿勢を惜しみなく伝えている。
これまでも多くの弟子たちがコンテストで入賞しているが、さらに一層優れた作品を制作してくれることが内田さんの今の楽しみだという。
「何よりも弟子の成長が楽しみ」という内田さん