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2018年7月31日更新
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日本人の心の原風景ともいえる、瓦のある美しい街並み。藤井禎夫さんは、数多くの社寺や住宅、歴史的建造物の瓦ぶきを手がけ、全国を飛び回る。
雨風から家を守る力強い屋根をふくことはもちろん、屋根の上の芸術も追求する。瓦の角度を一枚一枚緻密に考え、その建物に最適な図面を描く。角度がわずかに異なるだけで屋根の外見が大きく変わるため、設置する瞬間は緊張が走る。何もない空間に美しく収まるような瓦をふくことは、熟練技能の見せ所でもあり「最高に面白い仕事。天空に絵を描くようなものです」。
瓦ぶきの屋根は、歳月をかけその古びた美しさがにじみ出ると藤井さん。時には「良い歳の取り方をしている」と自らふいた屋根の歩みを見に行くこともあるという。
ものづくり日本大賞の内閣総理大臣賞受賞など、輝かしい功績を果たしながらも「転機は毎日。常に向上心を持ち続けている」と話す。「記憶に残る仕事はない。一つの仕事が終われば次の仕事のために神経を集中させるから」「後戻りはできない、前に進むしかない」。潔い言葉の根底には、かわらふき工という仕事への敬意と誇りがある。
現在は弟子に会社の経営を任せ、自身は後進を育成する立場に。「従業員一人一人がその店のトップとしての気概を持ってほしい」。藤井さんの信念は、絶えることなく受け継がれていく。
■東京マイスターWEBサイト http://www.meister-award.metro.tokyo.jp/
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「違いを見極める観察力を磨くことが大切」と藤井さん。 |