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2023年4月28日更新
目次
※5月号は4月17日時点の情報に基づき作成しています。 |
東京の現在をもっと広く・あざやかに。
都政の課題をもっと深く・わかりやすく。
多くの方々に見て、知っていただけるよう、本号より紙面を大刷新いたしました。
東京都の姿を、様々な企画の切り口とコラボレーションにて表現。より読み応えのあるコンテンツとして発信してまいります。
一人ひとりと向き合う紙面を目指して。
広報東京都のこれからにぜひご期待ください。
猛暑やゲリラ豪雨等、東京の気候の大きな変化は皆さんも実感しているはず。調査を進めると、取材班の想像をはるかに超えた危機的状況が判明!その実態とは?その中で私たちにできることはあるのか?じっくりお伝えします。
東京にいると、すでになんとなく感じている気候の変化。データを見てみると、桜の開花は早くなり、猛暑日も、年1日あれば多い方だった100年前と比べ、10日を超えることも普通です。このように「地球温暖化による気候変動」はすでに私たちの日常に影響を及ぼしています。
この一番の原因は「二酸化炭素」、東京の温室効果ガス排出量の9割弱を占めます。私たちは日々、電気をはじめとする大量のエネルギーを使っていますが、そのエネルギーのために、化石燃料を燃やして二酸化炭素を排出しています。この「二酸化炭素」をいかに減らすかが、我々の課題です。
出典:都における最終エネルギー消費および温室ガス排出総合調査2020年度
世界の科学者があつまる国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、産業革命前と比較した気温上昇が1.5℃になると、大雨や猛暑日など「極端現象」の発生は、例のないほどに増加すると言われています。現在、温暖化による気温上昇は1.1℃と言われています。「たった1.1℃」と感じる人もいるかもしれませんが、事実、世界ではすでに、洪水、干ばつといった気象災害の報告数が、過去50年間で約5倍に増えています。東京や日本でも「命に関わる暑さ」や豪雨・台風の時に「命を守る行動を」という言葉をニュースでよく聞くようになりました。このまま推移すると、1.5℃には、2030年代前半に到達し、21世紀末には最大4℃以上上昇する可能性が指摘されています。
私たちが想像する以上に、1℃、そして0.1℃単位の気温上昇の影響は計り知れず、これまでの私たちの「日常生活」が失われてしまうかもしれません。地球温暖化は、もはや「待ったなし」の緊迫した状況にあるのです。
気温上昇を1.5℃以内に抑えるために、世界は2050年CO2排出実質ゼロ(ゼロエミッション)、2030年時点で約半減の実現に向け、取り組みの強化を進めています。資源やエネルギーを大量に消費している東京も、都内の温室効果ガス排出量を2030年までに50%削減(2000年比)する「2030年カーボンハーフ」を表明し、これまでの取り組みをさらに拡大、加速させています。
実は、東京の二酸化炭素排出量の約7割は、住宅やビル・工場などの建物でエネルギーを使うことによって排出されています。多くの建物が集まる東京では、建物に対する対策が重要課題なのです。2000年頃から東京都は、企業の協力も得て、大規模な建物を中心に排出削減の取り組みを実施し、一定の成果を得てきました。一方、「家庭部門」と呼ばれる家庭からの二酸化炭素の排出量は世帯数の増加等もあり、なかなか下がっていないのが現状です。家屋や中小規模のオフィスからの排出を削減するために、都民一人ひとりの意識・行動の連携の重要性が増してきているのです。
この背景をふまえ、知っておいていただきたいのが、「電力の“HTT”(HへらすTつくるTためる)」アクションです。建物に関連して排出される二酸化炭素の多くは、電力使用によるものです。家での電力消費を「へらす」省エネ。そして、化石燃料を燃やさずに自然のエネルギーで電気を「つくり」「ためて」使う取り組みを進めていくことが、建物に関連して排出される二酸化炭素の削減に直結します。
省エネと言うと、「我慢するのは嫌だな」と思う方もいるかもしれませんが、温暖化対策は、実は「我慢」するものではなく、皆さんにとって「いいこと」も多いのです。
太陽光発電設備の設置は光熱費を削減し、4キロワットのパネルを設置した場合の、30年間の支出と収入を比較すると、最大159万円のメリットを得られる計算となっています。設置費用は、現在の補助金の活用により約6年で回収できます。
停電時も電気が使えるため、災害などで停電した場合も安心。さらに、住まいの断熱性を高めることは部屋間の温度差を小さくでき、ヒートショックを防ぐなど、私たちの健康にも好影響を与えてくれるのです。無理せず、オトクに、生活の質を上げるために、HTTに取り組んでいくことをおすすめします。
(注)東京都区部、2人以上の世帯を想定して試算(2022年5月時点)したものであり、今後の状況変化等で変動する場合があります。
〈試算条件〉
【注1】株式会社資源総合システム調べ(2021年度末平均(税込み)/パワコン、その他機器、標準工事費含む)補助金制度適用後
【注2】パワコン…パワーコンディショナーの略。太陽光パネルで発電した電力を、家庭で使用できる電力に変換する設備
【注3】期間中一度交換
【注4】10万円/キロワット
【注5】売電単価:17円/キロワットアワー(1年~10年)、8.5円/キロワットアワー(11年~30年)電気料金:33円/キロワットアワー(2022年5月)
出典:世界市民会議(World Wide Views on Climate and Energy)2015年6月実施
地球温暖化を防ぐためには、誰もが無関係ではなく、国・都・企業、そして、私たち一人ひとりが総力戦で取り組んでいく必要があります。それでは、私たち一人ひとりにできることは何でしょうか。東京都環境局 気候変動対策部 環境都市づくり課長 福安俊文(ふくやすとしふみ)さんにお話をうかがってみました。
担当者のホンネを突撃取材にゃ
都民の皆さんに、まず意識していただきたいのが、「HTT」の「へらす(H)」の部分、省エネです。省エネに取り組んでいただくことで、二酸化炭素排出量の削減につながります。エアコンの温度設定や電気のこまめなスイッチオフなどに加えて、住まい環境の改善も効果的です。多くの熱が出入りする窓やドアを高断熱のタイプに改修すれば省エネとなり、電気代も抑えられます。また、ヒートショックのリスク低減や結露の防止になり、毎日の健康や快適性の向上にもつながるのです。省エネ性能の高い家電等(エアコン、冷蔵庫、給湯器、LED照明器具)への買い替えも効果的です。今、都民の方がこれらの家電等を買い替えると、商品券等に交換できる東京ゼロエミポイントが付与されるんです。
もう1つ大きな対策となるのは、太陽光発電で電力をつくり(T)、蓄電池と組み合わせてためる(T)ことです。都では、断熱性など住まいの環境性能を向上させ、太陽光発電などを可能な限り設置する住宅を「東京ゼロエミ住宅」として推進しています。
東京の強みは、たくさんの屋根があることです。現在、都内で太陽光発電を設置できる建物は約225万棟、そのうち4%にしか太陽光発電は設置されていません。言い換えれば、東京の屋根には太陽光発電の大きなポテンシャルがあるんです。2050年時点の建物の約半数は、これから新築される建物に置き換わると見込まれています。「東京ゼロエミ住宅」などの普及を加速させることで、2050年ゼロエミッション東京の実現に貢献していきます。
令和7年4月からスタートする「太陽光発電の設置義務化」ですが、太陽光発電の設置義務者は、大手ハウスメーカー等の事業者です。事業者が、住宅の購入者等とともに建物の環境性能の向上を推進する制度になります。対象は新築に限られ、日当たりや屋根の大きさも考慮されます。太陽光発電の設置は電気代が安くなるだけでなく、補助金を活用することで、設置費用を早期に回収することもできます。ハウスメーカー側にとっては住宅環境性能の向上へのノウハウが蓄積されるので、そのメリットは、やがて、より多くの人に届くことになります。実は東京の温暖化対策は、日本各地をはじめ海外でも注目されています。これからの都の取り組みが、世界の温暖化対策の一つの指標になっていければと考えています。
長期間の中でのメンテナンス費や故障などで、想定外の出費があるのではと思っている方もいらっしゃいます。都の経済性試算では、維持管理費を含めても、経済的なメリットが得られます。また、万が一の故障に備え、製品には保証があります。一方で、都民の皆さまからは、太陽光発電の設置や維持管理に関する疑問や不明点について、どこに相談すれば良いかといったご意見もいただいています。都では現在、太陽光発電等の「ワンストップ総合電話相談窓口」を開設しています。太陽光発電や補助金に関する相談をお受けしていますので、気軽にお電話いただきたいです。
太陽光発電等の「ワンストップ総合電話相談窓口」
電話 03-5990-5236
平日 9時00分〜17時00分
太陽光発電の義務化に関する制度について都が行ったパブリックコメントに対して、約3,800通ものご意見をいただいたのですが、若い世代ほど、肯定的な意見が多く寄せられたことが強く印象に残っています。中でも印象的だったのが、ある17歳の方からの意見です。そこには「今しか見ない判断をするのではなく、地球環境が手遅れになった後の、後世が受けなければならない被害を忘れないでください」と切実なご意見が記されていました。私は今でこそ、温暖化対策を担当し、その必要性を訴えていますが、二酸化炭素を排出してきた者の一人として、未来の世代の方々から責任を問われる立場でもあることを自覚しました。
一担当としては、都民の皆さまには、今のご自身のお得や日々の暮らしの質を高めることができるという視点で、HTTにご協力いただきたいですし、補助金の制度もご活用いただければと思っています。ただ同時に、地球の未来のためには、都民の皆さまの一人ひとりのご協力が必要となっていること、そして、今を生きる世代の責任ということにも少し思いを馳せていただいて、ぜひこれからも東京都と一緒に積極的な行動をお願いします。その中で私も担当者としての責務を全うしていければと考えています。
※2023年5月時点のものの一部抜粋です。
※補助金等には、一定の条件等があります。詳細は「ワンストップ総合電話相談窓口」までお問い合せください。
H へらす |
T つくる |
T ためる |
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アクション | 日々の行動として | 家電などの買い替え時には | リフォーム時 には |
新築住宅・既存住宅向け | |||||
省エネ 冷房時の室温は 28℃を目安に。出来る 取組を考えてみる。 |
サステナブル 商品の選択 (電力メニューを再生可能 エネルギーへ切り替える) |
温暖化の ニュースに 少し興味を持つ。 家族・友人と話す |
省エネ性能の高い エアコン、 冷蔵庫、給湯器 への買い替え |
LED照明器具 への買い替え |
高断熱窓・ ドアへの改修 |
太陽光発電 設備を設置 |
蓄電池を設置 | 電気自動車の 購入、電気自動車 充電設備の設置 |
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補助金等 | 家庭の節電マネジメント事業 (デマンドレスポンス) |
ー | 東京ゼロエミポイント | 断熱・太陽光 住宅普及 拡大事業 |
太陽光発電設備、蓄電池、電気自動車の 補助金があります。 詳細は都のホームページをご覧ください。 |
都民の一人ひとりの行動をしっかりサポートできるように、補助金の支援なども行っています。
最新の情報は、ぜひこちらをご覧ください!
監修:江守正多(東京大学未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所上級主席研究員)、東京都環境局
イラスト:(C)吉本ユータヌキ