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2019年2月28日更新
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「日本中のあらゆる時計を直した自負があります」と語る前山田三男さん。
修理の多くは機械式腕時計。電池で動くクオーツ式とは違い、機械式は巻いたゼンマイのほどける力で動く。部品は100を超え、髪の毛より細い針状のものや砂粒より小さいものもある。「100分の1ミリメートルの世界で、手ぶれが最大の敵」のため、作業前は先端の尖った道具を見て心を落ち着かせる。10秒ごとに息を止め、時には心臓の鼓動の合間を縫って作業をするという。
こだわりは洗浄。はけで手洗いし、超音波式洗浄機でも洗う。さらに、つまようじを細く削り部品の穴の汚れをかき出す。徹底的に汚れを落とすことで、潤滑油をとどめる処理が効果を発揮し、より長く精度が保たれるという。
メーカーや他の店で修理を断られた腕時計、100年以上前の懐中時計も「私にしか直せない」と諦めずに復活させてきた。しかし、完璧な修理をしたが直らず、オーバーホール(分解洗浄)を繰り返したことも。「技術に完璧はない」と語り、卓越した技術、豊富な経験におごることはない。
持ち込まれる時計は、形見や初任給で買ったものなど、お客さんの愛着あるものばかり。「預かりものなので失敗は許されません」と。また、生活スタイルに応じた扱い方をアドバイスしたり、状態を確認するため定期的に連絡を取るなど、アフターケアにも力を入れる。
お客さんからの「正確に動いているよ」「ありがとう」の感謝の言葉がやりがいにつながっていると言い、これからも修理を通して時計と向きあっていく。
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使い込まれた道具がズラリと並ぶ仕事場 |